2026年05月20日
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フリーランス法と取適法の違いは? 発注者が知るべきポイントを解説

フリーランス法と取適法の違いは? 発注者が知るべきポイントを解説

令和6年11月1日に施行された「フリーランス法」(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、フリーランスを保護するための初めての包括的な法律です。これに対し、令和8年1月1日に施行された「取適法」(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)は、中小受託事業者との取引適正化を図る法律です。

両法は、いずれも立場の弱い受託者を保護する点で共通しますが、適用される当事者、対象取引、課される義務や禁止行為には明確な違いがあります。また、ひとつの取引にフリーランス法と取適法の両方が適用される場合もあるため、両法の違いや適用関係を正しく理解しておくことが重要です。

今回は、フリーランス法と取適法の違いや発注事業者・委託事業者が実務上注意すべき点などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、フリーランス法・取適法とは?

フリーランス法と取適法は、どちらも立場の弱い受託者を保護するための法律ですが、その目的や適用範囲には違いがあります。まずは、両法の概要を整理し、発注者が理解すべき基本的な位置づけを確認しておきましょう。

  1. (1)フリーランス法とは

    フリーランス法は、令和6年11月1日に施行された法律です。従来、フリーランスは、労働関係法令や旧下請法などの既存の法制度の保護を受けにくい場面もあり、報酬の未払いや買いたたき、ハラスメントといったトラブルが問題となっていました。

    そこで、フリーランスを「特定受託事業者」と位置づけ、発注者との取引にルールを設けることで、公正な取引関係を確保しようとしたのがフリーランス法です。

    フリーランス法の大きな特徴は、フリーランスに業務を委託する限り、発注者の規模を問わず事業者に適用される点にあります。大企業に限らず、中小企業や個人事業主であっても、フリーランスに仕事を発注する側には一定の義務が課されます。これにより、従来は規制の外にあったフリーランスとの取引が、より広く法的保護の対象になりました。


  2. (2)取適法とは

    取適法は、中小受託事業者(旧・下請事業者)を不当な取引から守り、取引の適正化を図るための法律です。改正前の「下請法」が見直され、通称も「取適法」に改められました。

    具体的には、委託事業者(旧・親事業者)と中小受託事業者の間で生じる力関係の格差を是正し、取引の適正化を図ることを目的としています。

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2、フリーランス法と取適法の違い

フリーランス法と取適法は、適用される当事者・取引の種類・禁止行為・発注者の義務など、具体的な規制内容には違いがあります。以下では、両法の違いを4つの視点から比較して整理し、さらに両法が適用されるケースについても確認していきましょう。

  1. (1)適用される当事者

    ① フリーランス法
    対象となるのは、発注者と受託者です。法人格を持たず個人で業務を請け負うフリーランスのほか、代表者以外に他の役員がおらず、かつ、従業員がいない法人など、実態として個人に近い会社も受託者に含まれます。発注者は、大企業・中小企業・個人事業主を問わず、すべての事業者が規制対象です。
    つまり、発注者が誰であるかよりも、受託者がフリーランスであるかが重視されます。

    ② 取適法
    対象となるのは、発注側である「委託事業者」と、中小企業や個人事業主などの「中小受託事業者」です。取適法では、取引類型に加え、委託事業者と中小受託事業者の資本金基準または従業員基準によって、適用の有無が決まります
    たとえば、資本金では基準に当てはまらない場合であっても、委託事業者の従業員数が100人(または300人)を超え、中小受託事業者の従業員数がそれ以下である場合には、従業員基準により取適法の適用対象となります。

  2. (2)適用される取引の種類

    ① フリーランス法
    フリーランスが受託する業務委託全般が対象となります。たとえば、ライター、デザイナー、エンジニア、翻訳者、動画編集者などが受ける契約が典型例です。
    取適法では対象外となることがある自社利用目的の役務提供委託も、フリーランス法では対象に含まれます。

    ② 取適法
    対象となる取引類型は法律で限定されています。下請法では4つのみでしたが、取適法では「特定運送委託」も対象に追加されました。

    • 製造委託(製品の製造や加工)
    • 修理委託(機械や機器の修理)
    • 情報成果物作成委託(システム開発・設計など)
    • 役務提供委託(データ入力・機械操作など)
    • 特定運送委託(物品の運送委託など)

    なお、自社で利用する目的の役務提供は、原則として対象外です。

  3. (3)発注者の禁止行為

    ① フリーランス法
    フリーランス法では、継続性のある1か月以上の業務委託について、受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更・やり直しといった行為が禁止されています。これとは別に、就業環境の整備として、ハラスメント対策に関する体制整備義務も課されています。

    ② 取適法
    典型的な禁止行為として「買いたたき」「受領拒否」「返品」「代金支払いの遅延」「減額」「不当なやり直し」などがあります。また、取適法になったことで、協議に応じない一方的な代金決定や、手形払い等による不適切な支払方法に加え、振込手数料を中小受託事業者に負担させることも禁止されました。

  4. (4)発注者に課された行為義務

    ① フリーランス法
    契約内容(業務内容・報酬・支払期日など)を書面または電磁的記録で明示し、報酬の支払期日を定めたうえで、原則として60日以内に支払う必要があります。ただし、再委託の場合には支払期日の例外規定があり、取適法のような法定の遅延利息制度は設けられていません。
    さらに、フリーランス法では、業務委託の期間や発注事業者の属性に応じて、募集情報の的確表示や育児・介護等との両立への配慮、ハラスメント対策の体制整備、中途解除等の事前予告・理由開示といった義務が課される場合があります。

    ② 取適法
    委託事業者には、発注内容や支払条件などの明示義務があり、製造委託等代金は原則として受領日から60日以内に支払う必要があります。
    取適法は、フリーランス法とは異なり、再委託の場合の支払期日の例外規定がなく、遅延利息(年14.6%)の支払い義務が定められているのが特徴です。

  5. (5)フリーランス法と取適法の両方が適用されるケース

    フリーランス法と取適法は別の法律ですが、同じ取引に両方が適用されることがあります。

    たとえば、委託事業者が、従業員を使用していない個人事業主のエンジニアに対して、プログラム作成を委託するケースを考えてみましょう。

    このようなケースにおいて、

    • 受託者がフリーランス法上の「特定受託事業者」に当たり、
    • かつ、その取引が取適法上の情報成果物作成委託(プログラムの作成など)などに該当し、
    • かつ、委託事業者側が資本金基準または従業員基準を満たす

    場合、両法が重複して適用される可能性があります。

    重要なのは、上記ケースでは、両方の法律に対応しなければならないという点です。フリーランス法と取適法はそれぞれ別の義務や禁止行為を定めているため、両方の法律に基づく要件を満たしていない場合には、いずれかの法律違反となるおそれがあります。

    公正取引委員会も、ひとつの製造委託等について両法が適用される場合には、それぞれの法律で求められる明示事項を、ひとつの書面や電子メール等にまとめて示すことができるとしています。

    したがって、実務上は、フリーランス法と取適法の双方を前提に、契約条件や発注内容を整理することが不可欠です。契約相手がフリーランスであるかどうかだけでなく、その取引が取適法上の対象取引に当たるか、委託事業者の規模基準を満たすかまで確認しましょう

    参考:「取適法Q&A(別紙2)」(公正取引委員会)

3、フリーランス法・取適法に対応するため、発注者がすべきこと

フリーランス法と取適法はいずれも発注側の事業者に一定の義務を課す法律です。違反すると行政指導や公表といったリスクに直結するため、発注者は、日常の取引において両法のルールをしっかりと理解しておくことが大切です。以下では、発注者が気を付けるべき具体的なポイントを紹介します。

  1. (1)発注取引に両法が適用されるかどうかの確認

    まず重要なのは、自社の取引にフリーランス法または取適法が適用されるかを確認することです。また、同一の取引に両法が適用される場合もあるため、相手方の属性だけでなく、取引内容や資本金・従業員数の基準も確認する必要があります。

    特に、法人格を持たない個人事業主だけでなく、一定の一人法人に該当する相手方との契約でも、規模を問わずフリーランス法の規制を受ける点に注意が必要です。

  2. (2)交付書面のひな形の作成・見直し

    両法はともに、契約条件を明示する「書面交付義務」を定めています。そのため、発注者は、契約書や注文書のひな形を見直し、必要事項が漏れなく記載されているか確認すべきです。

    記載事項の例として、業務内容、報酬額、支払期日、成果物の納品方法、契約解除の条件などが挙げられます。電子契約やメールによる交付も可能ですが、記録として残る形で行うことが重要です。

  3. (3)発注マニュアルの整備

    現場担当者が法律を知らずに違反してしまうことを防ぐために、社内マニュアルを整備することが求められます。マニュアルには、以下のような内容を盛り込むと有効です。

    • フリーランス法・取適法の概要
    • 禁止行為や義務の一覧
    • 書面交付のルールや支払期限の遵守方法

    このようなマニュアルを社内研修やイントラネットで共有することで、担当者の法令遵守意識を高めることができます。

  4. (4)取引担当者へのヒアリング

    定期的に現場担当者からヒアリングを行い、取引実態を把握する仕組みを設けることも効果的です。
    たとえば、「支払期日が守られているか」「口頭での発注が常態化していないか」「不当な値引き要求が行われていないか」といった点を確認することで、違反リスクを早期に発見できます。
    ヒアリング内容は記録に残し、必要に応じて改善策を講じることが重要です。

4、フリーランス法・取適法対応は弁護士に相談を

フリーランス法や取適法は、発注側の事業者にとって細かい規制や実務対応が求められる法律です。形式的に契約書を整えるだけでは不十分で、実際の取引の運用に即した対応が欠かせません。法令違反による行政指導や企業イメージの低下を防ぐためにも、弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)適用関係の判断をサポート

    フリーランス法と取適法は、対象となる当事者や取引内容が異なります。そのためどちらの法律が適用されるのか、あるいは両法が重複して適用されるのかを正確に判断するのは容易ではありません。

    弁護士に相談すれば、契約相手や取引スキームを踏まえて、自社の取引にどの法律が適用されるのかを正確に判断してもらえます

  2. (2)契約書・発注書のリーガルチェック

    両法はいずれも「契約条件を書面で明示する義務」を課していますが、その記載内容や形式が不十分だと違反にあたる可能性があります。

    弁護士は、契約書や注文書のひな形を確認し、必要な条項の追加や修正を提案してくれます。これにより、法令違反のリスクを未然に防ぐことができます。

  3. (3)トラブル対応・行政調査への備え

    万が一、報酬未払いのクレームや行政からの調査が入った場合も、弁護士に相談しておくことで迅速な対応が可能です。発注者の行為が違反に該当するかどうかを精査し、改善策や交渉方針をアドバイスしてもらえます

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5、まとめ

フリーランス法と取適法は、いずれも立場の弱い事業者を保護するための法律ですが、適用対象や取引の範囲、発注者の義務には大きな違いがあります。発注側の事業者は、自社の契約相手や取引内容を確認し、どちらの法律が適用されるのか、あるいは両方が適用されるのかを正しく判断することが重要です。

また、契約書の整備や社内マニュアルの作成、取引担当者への教育を通じて、違反リスクを未然に防ぐ体制づくりが求められます。

コンプライアンスを徹底し、安心して取引を進めたい企業様は、ぜひベリーベスト法律事務所にまでご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
この記事の監修者
杉山 大介
杉山 大介  弁護士
ベリーベスト法律事務所
所属 : 第二東京弁護士会
弁護士会登録番号 : 59418
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