不動産(土地や建物)の売買をする際に締結する契約書のことを、不動産売買契約書といいます。
対象となる不動産を特定し、売買価格や支払いの時期、方法、引渡し、手付金や所有権移転登記、解除、損害賠償に関する事項などの取り決めを記載した契約書になります。
基本的には、「売買契約」は当事者による口頭の約束で自由に成立させることができます。
もっとも、不動産という非常に高価な物の取引をするのですから、後に条件の相違などでトラブルとならないよう、不動産売買契約書を作成し、売買の条件について明確にし、詳細に取り決めをしておくことは必須といえます。
実務的にも、不動産取引を行うにあたって、不動産売買契約書を作成しない、などということはまずありえません。
判例でも、売買契約書への署名・捺印がなされていないときには、売買契約の成立を認めないものが多いです。
不動産売買には、不動産や法律についての専門知識が要求されますので、個人間で不動産売買契約を作成して締結するのは困難です。
通常は、宅地建物取引業者(宅建業者)が媒介(仲介)して、仲介業者が契約書を作成し、売主と買主が内容を確認した上で署名押印する、という流れが一般的です。
売買契約書を作成するにあたって、仲介業者は、各種調査や査定の確認をします。
もし、仲介業者を介さず、売主と買主が直接契約するのであれば、特に買主側は、自分で下記の事項などを十分調査しなければならないでしょう。
物件の物理的な状態の調査・権利関係の調査・法令上の制限に関する調査が必要です。
これらの情報に基づいて、仲介業者は、買主の検討のため、不動産売買契約を締結する前に、対象物件の内容や取引条件等の必要情報を記載した「重要事項説明書」を作成し、買主に対して交付し、宅地建物取引士により重要事項の説明を行います。
これらを行うことは、宅地建物取引業法(宅建業法)第35条により宅建業者に義務付けられています。
宅地建物取引士による説明は、契約締結までになされることが法の要請ですが、契約当日に口頭で読み上げるだけでは充分に理解できないことも多いので、予め重要説明事項を売主・買主に交付して確認してもらうなどの方法が推奨されています。
対象物件の状況や取引条件について売主と買主が確認した上で、通常は仲介業者が不動産売買契約書を作成します。
不動産仲介業者1社が売主と買主の両方の売買を媒介する場合は、その業者が使用するひな形を利用して契約書を作成することが一般的です。
売主と買主が、それぞれ別の仲介業者に依頼をしている場合は、双方の業者同士で検討して売買契約書を作成します。
不動産売買契約書には、基本的に以下の事項等を記載します。
境界の明示や、負担の消除、売主の表明保証、買主の容認事項などが記載されることもあります。
重要事項説明書に記載済みの事項については、それと同じ内容を契約書に記載します。
不動産売買契約の内容の決め方は、原則は自由ですが、売主が宅建業者自身である場合には宅建業法の、事業者と個人(消費者)が取引する場合には消費者契約法の、特別な制限がかされることもあります。
売買契約を締結する前に、売買価格が適正なものか、宅建業者に意見を求めたり、複数の業者に査定を依頼するなどして確認するとよいでしょう。
また、実際に当該不動産を訪れて内覧したり、外観や管理状況を確認することはとても大切です。
建物の現況を確認するとともに、以下のような点について契約書や重要事項説明書、付属資料の記載事項と齟齬がないか確認しましょう。
不動産登記簿謄本を取得して権利関係を確認することも不可欠です。
投資用物件の場合
投資用の物件(マンションやオフィスビル、商業ビルなど)でしたら、物件の現況に加えて、物件所在地の不動産マーケット情報を把握し、以下のような点を確認・検討することが必要です。
不動産売買契約書を締結するにあたっては、契約書記載事項をよく確認し、不明点があれば仲介業者に質問して、しっかりと理解することが大切です。
契約書の記載事項を鵜呑みにせずに、自分でも付属する原資料をしっかりと確認して契約書記載事項と比べてみる必要があります。
不動産売買契約は一旦締結すると、高額な取引であることもあり、簡単に解除はできません。手付金を放棄して解約できるのはいつまでなのか、契約違反による解除について違約金の額は妥当なものか等も確認しましょう。
不動産売買は高額な取引ですので、トラブルに発展しやすい取引です。
契約書には法律や不動産特有の専門用語が多くでてきますし、専門知識がなければ自分で十分に内容を確認することは困難といえるでしょう。
後のトラブルを回避するためには、不動産売買に詳しい弁護士に依頼して、不動産売買契約書やその他付属資料のリーガルチェックをしてもらうのが1番です。
以下のような点を、専門知識を有する弁護士に相談しましょう。
仲介業者が法律上定められた手続きを踏まえているか、重要事項説明に不備がないか、仲介手数料は適正なのか等、自分自身では判断できないことも多いでしょう。
弁護士に依頼すれば、宅建業者の免許状況を確認し、重要事項説明やクロージング(当事者、関係者立会いでの、売買契約の締結、代金決済、引渡し、所有権移転登記申請などを行う完了日)に同席し立ち会ってもらい、不備があれば指摘、助言してもらうことができます。
ベリーベスト法律事務所では、不動産取引に詳しい弁護士が、不動産売買契約書の締結前に、契約書レビューを行うことが可能です。クロージングへの同席、立会いの実績もあります。
売買契約書に付属する資料(不動産登記簿謄本、公課証明書、不動産価格査定書、建物図面、公図、耐震診断結果、アスベスト調査報告書、土壌汚染状況調査結果報告書等)を確認して、契約書の記載事項と相違がないか確認ができます。
問題点があれば指摘し、対応を仲介業者に求めます。
投資用の物件であれば、投資の観点から、付属するレントロール(家賃明細表)や建物賃貸借契約書、不動産管理委託契約書を確認して、契約状況に問題がないか確認できます。管理会社による管理状況が適切か、鑑定書の査定価格が適正か、将来的なリスクがないか、助言ができます。
この他、ベリーベスト法律事務では、弁護士の他に司法書士、税理士、一級建築士、土地家屋調査士など、さまざまな専門家が在籍しており、チームを組んで対応が可能ですので、不動産に関する税金、登記、建築設計、境界等に関するご相談もワンストップで対応が可能です。
外国語ができる弁護士、スタッフもいますので、海外からの日本の不動産取引に関するご相談にも対応ができます。
不動産取引では、売買契約書のほかにも、文中に出てきた資料含め、さまざまな契約書、資料が必要になります。重要なものとしては例えば以下があります。
これらの書類、資料についても、ベリーベスト法律事務所の弁護士等が専門的知見からレビュー、助言をすることができます。
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