更新日:2026年09月09日 公開日:2026年09月09日
  • カスハラ対策義務化

【令和8年10月施行】カスハラ対策義務化とは? 企業の対応を解説

【令和8年10月施行】カスハラ対策義務化とは? 企業の対応を解説

令和8年10月1日から改正労働施策総合推進法により、すべての事業に対してカスハラ対策が義務付けられます。

企業は、相談体制の整備や被害者への配慮、悪質な行為への対処方針策定などを進めなければなりません。

本記事では、カスハラの要件や判断の考え方、企業が講ずべき措置を、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、【令和8年10月施行】カスハラ対策義務化とは?

令和8年10月1日に改正労働施策総合推進法が施行され、業種や企業規模を問わず、すべての事業主にカスハラ対策が義務付けられます。各企業は、カスハラの防止と発生後の対応のため、雇用管理上必要な措置を講じなければなりません。

  1. (1)カスハラの要件

    「カスハラ」とは「カスタマーハラスメント」の略称です。職場において顧客や取引先などが行う言動のうち、社会通念上許容される範囲を超え、その結果として労働者の就業環境を害するものを指します

    改正労働施策総合推進法第33条第1項と厚生労働大臣の指針を踏まえると、職場におけるカスハラは、次の三つの要素をすべて満たすものです。

    ① 職場において顧客等による言動が行われること
    ※顧客等には、顧客、取引先、施設の利用者のほか、今後商品を購入したり、サービスを利用したりする可能性がある人なども含まれます。電話やSNSなどを通じた言動も対象になり得ます。

    ② 労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして、社会通念上許容される範囲を超えていること

    ③ その言動によって、労働者の就業環境が害されること
    ※「就業環境が害される」とは、労働者が身体的・精神的な苦痛を受け、働くうえで看過できない程度の支障が生じることをいいます。判断に当たっては、同様の状況で一般的な労働者が就業上の支障を感じるかという観点も考慮されます。事業主は、このようなカスハラによって労働者の就業環境が害されないよう、雇用管理上必要な措置を講じなければなりません。
  2. (2)カスハラの判断基準と該当行為の具体例

    顧客等の言動がカスハラに当たるかどうかは、要求の内容と手段・態様を中心に、言動の目的や経緯、当時の状況、業種などを踏まえて総合的に判断します。

    ① 行為自体の不当性
    次に挙げる行為は、顧客側の要求の内容が妥当であっても、手段や態様が不当であると判断され、カスハラに当たる可能性があります。
    • 身体的な攻撃(暴行、傷害)
    • 精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損(きそん)、侮辱、暴言)
    • 威圧的な言動
    • 土下座の要求
    • 継続的またはしつこい言動
    • 拘束的な行動(不退去、居座り、監禁)
    • 差別的な言動
    • 性的な言動
    • 従業員個人への攻撃、要求

    ② 要求内容の不当性
    商品交換や金銭補償、謝罪を求めること自体は、顧客側が主張する不備等と要求の内容が見合っていれば、正当なクレームになり得ます。一方、要求に理由がない、商品・サービスと無関係である、契約内容を著しく超えているなどの場合は、要求内容そのものが不相当と判断され、カスハラに当たる可能性があります。
    • 理由のない要求や、商品・サービスと無関係な要求
    • 契約で予定されたサービスを著しく超える要求
    • 対応が著しく困難または不可能な要求
    • 不当な損害賠償要求
  3. (3)カスハラ対策の内容|厚生労働大臣の指針に沿って

    令和8年2月26日に、厚生労働大臣は「カスハラ指針」を告示しました。これは、改正労働施策総合推進法第33条第4項に基づき、事業主が講ずべき措置を具体化したものです。

    企業は、指針に沿って次の措置を講じる必要があります。

    ① 対応方針等を明確にし、従業員へ周知する
    カスハラには関する毅然(きぜん)と対応し、従業員を保護するという会社の方針を明確にします。あわせて、カスハラの内容や、発生時に予定している対処方法を、社内広報や研修などを通じて従業員へ周知します。

    ② 相談窓口と対応体制を整える
    相談窓口をあらかじめ定め、従業員に周知します。相談担当者が内容や状況に応じて対応できるよう、マニュアルの整備、担当者に対する研修、法務部門などとの連携体制の構築も進めましょう。

    ③ 相談後に事実確認と被害者への配慮を行う
    カスハラの相談を受けたときには、被害を受けた従業員や関係者に対するヒアリング、録音・録画などの客観的資料の確認などを通じて事実関係を速やかに把握します。そのうえで、改善や再発防止などの措置を講じる必要があります。
    被害者への配慮としては、上司などが代わって対応する、被害者と行為者を引き離す、メンタルヘルスの相談先につなぐといった対応が考えられます。

    ④ 悪質なカスハラを抑止するための方針と体制を整える
    特に悪質と考えられるカスハラについては、対処方針をあらかじめ定めて従業員に周知し、実際にその方針に沿って対応できる体制を整備します。
    具体的には、状況に応じて、警察への通報、警告書の送付、商品販売やサービス提供の停止、出入り禁止、仮処分命令の申し立てなどを検討します。

    ⑤ プライバシーを保護し、不利益な取り扱いを防ぐ
    相談者等や行為者などのプライバシーを保護するための措置を公示、その内容を従業員へ周知します。また、相談したことや事実確認に協力したことを理由に解雇などの不利益な取り扱いをしない旨を定め、周知・啓発することが必要です。
    なお、対策を講じる際は、正当な苦情の申し入れを不当に排除しないよう配慮し、消費者の権利や、障害者差別解消法に基づく合理的配慮にも留意する必要があります。
    また、自社の従業員が取引先などの従業員にカスハラを行わないよう注意を促し、他社から事実確認への協力を求められたときは、これに応じるよう努めることも求められます。

    参考:「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(厚生労働省)

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2、企業が講ずべきカスハラ対策のチェックリスト

企業がカスハラ対策を行うに当たり、法令上必ず講ずべき措置と、対策の実効性を高めるための実務上の対応をまとめたチェックリストを紹介します。すべての項目が一律に法定義務となるわけではないため、自社の業種、規模、顧客対応の実情に応じて確認してください。

① カスハラ防止方針の明確化・社内周知
  • □ 経営トップがカスハラ防止の方針を明確に示している
  • □ カスハラを許容しない企業姿勢を社内外へ発信している
  • □ カスハラに該当し得る行為や判断基準(正当なクレームとの区別)を明確に定義している
  • □ カスハラ防止の方針(判断基準を含む)を従業員へ周知・啓発している

② 実態把握・課題分析
  • □ カスハラの発生状況を継続的に把握している
  • □ 発生件数や内容を記録・分析している
  • □ 従業員が求める対応や取り組みを把握している

③ 悪質なカスハラへの対策
  • □ 悪質なカスハラに備えて、防犯カメラや警備体制などの安全対策を導入している
  • □ 警察などの緊急連絡先を従業員へ周知している
  • □ 緊急時の対応手順を定めている

④ 対応体制の整備
  • □ カスハラ対策を担当する部署や担当者を設置している
  • □ カスハラ対応の責任者と、判断をエスカレーションする基準を明確に定めている
  • □ カスハラの発生時に、必要に応じて関係部署が連携できる体制となっている
  • □ カスハラ発生時の対応手順を明確化している
  • □ 管理職向けの対応研修を実施している

⑤ 相談窓口の設置
  • □ カスハラの相談窓口を設置している
  • □ カスハラ対応のマニュアルを作成している
  • □ 相談担当者に対して、被害者への接し方や社内での情報共有などの研修を行っている
  • □ 相談窓口への連絡方法や、相談を理由に不利益な取り扱いを受けない旨を従業員に周知している

⑥ 被害者に対するケア
  • □ 被害者をメンタルヘルスの相談・支援につなげる体制を整備している
  • □ 必要に応じて勤務場所・業務内容等を配慮できる体制が整っている
  • □ ひとりで対応させず、上司などがサポートできる仕組みが整っている

⑦ 再発防止・改善
  • □ 発生したカスハラ事案を振り返り、原因分析を行っている
  • □ 対応マニュアルの内容や運用方法を定期的に見直している
  • □ カスハラに関する研修の内容や対応体制を継続的に改善している

⑧ プライバシー保護・不利益な取り扱いの防止
  • □ 相談者や行為者などのプライバシーを保護するための措置を講じ、従業員へ周知している
  • □ 相談や事実確認への協力を理由に、不利益な取り扱いをしない旨を定め、従業員へ周知している

3、カスハラ防止に取り組むことが重要である理由

カスハラは従業員の労働意欲を低下させ、休職や離職にもつながり得る可能性がある行為です。従業員の安全と就業環境を守るため、企業が実効的なカスハラ対策を講じることが急務といえます。

特に令和8年10月以降、企業が必要なカスハラ対策を講じていない場合、厚生労働大臣から助言、指導または勧告を受けることがあります(改正労働施策総合推進法第42条第1項)。

勧告に従わなかった場合は企業名が公表され、社会的評判が損なわれてしまうおそれがあるので要注意です(同条第2項)。

各企業においては、厚生労働大臣の指針を参考にしつつ、自社に合った形のカスハラ対策を検討・実践することが求められます。

4、カスハラ防止対策を行う際には、顧問弁護士との契約がおすすめ

企業が効果的にカスハラ対策を行うためには、顧問弁護士と契約することをおすすめします

顧問弁護士と契約すると、自社の業種や事業内容、顧客対応の実情などに応じたカスハラ対策のあり方について、いつでも質問をしたり、アドバイスを受けたりすることができます。

たとえば、カスハラに関する社内ルールや対応マニュアルの整備、従業員向け研修の実施などについて、法的な観点から助言やサポートを受けられます。実際にカスハラが発生した際にも、適切な対応方法について速やかに顧問弁護士へ相談できるので安心です。
特に悪質なカスハラに関しては、民間での対応では手に余る場合もあり、刑事告訴などを行うこともあります。

カスハラへの対応を誤ると、従業員の安全や企業の信用に影響が及ぶおそれもあります。日頃から顧問弁護士と連携し、生じている問題の程度に応じた対応方法を検討するなど、サポートを受けられる体制を整えておくことが重要です。

ベリーベスト法律事務所は、クライアント企業のニーズに応じてご利用いただける顧問弁護士サービスをご用意しておりますので、ぜひご活用ください。

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5、まとめ

令和8年10月1日から施行されるカスハラ対策義務化に向けて、企業は自社に合った形でカスハラ対策を実施する必要があります。厚生労働大臣の指針を踏まえつつ、効果的な対策を行って従業員をカスハラから守りましょう。

カスハラ対策の検討・実施に当たっては、弁護士のアドバイスが大いに役立ちます。特に顧問弁護士と契約すれば、自社の事業をよく理解した法律専門家の視点から、効果的なカスハラ対策のあり方について、いつでも有益なアドバイスを受けられます

ベリーベスト法律事務所は、企業のハラスメント対策に関するご相談を随時受け付けております。顧問弁護士サービスも充実しておりますので、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
この記事の監修者
杉山 大介
杉山 大介  弁護士
ベリーベスト法律事務所
所属 : 第二東京弁護士会
弁護士会登録番号 : 59418
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