近年では不動産相場が高騰しており、それに伴って借地の地代(賃料)も高くなる傾向にあります。しかし宗教法人が他人に貸している土地については、長年にわたって地代が据え置かれているなど、近年の相場を反映できていないケースが少なくありません。
地代が不相当となっている場合は、借主(賃借人・借地人)に対して地代の増額を請求できる可能性があります。弁護士のサポートを受けながら、地代を適正な金額へ引き上げることを目指しましょう。
本記事では、宗教法人が他人に貸している土地の地代を増額する方法などを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
宗教法人が所有する借地の地代を増額するためには、主に2つの方法があります。
1つ目の方法は、借主との間で合意することです。
借主に対して「地代が安すぎるので上げたい」と通知し、借主がそれに応じれば、合意内容に従って地代が増額されます。借主との間で合意書を締結し、合意の事実と内容を明確化しましょう。
しかし、借主は地代の増額を拒否することも考えられます。
その場合に考えられる2つ目の方法は、借地借家法に基づく「地代等増額請求(地代増額請求、賃料増額請求)」を行うことです。
借地借家法は、建物所有を目的とする土地の賃貸借などに適用される法律です。宗教法人が他人に貸している土地についても、借主がその土地上に建物を所有することを目的としている場合には、借地借家法が適用されます。
一定の条件を満たしていれば、貸主(賃貸人・地主)は地代等増額請求を行い、借主の同意がなくとも地代を増額することが可能です。
なお借地借家法では、地代等が不相当に高くなった場合の地代等減額請求(地代減額請求・賃料減額請求)も認められています。増額請求と減額請求を併せて「地代等増減額請求(賃料増減額請求)と総称されます。
借地借家法に基づく地代等増額請求権は、地代の額(賃料額)が不相当となった場合に行うことができます。地代等増額請求が認められると、請求時以降将来に向かって地代が増額されます。
地代等増額請求が認められるのは、次の2つの要件を満たす場合です(借地借家法第11条第1項)。
借地借家法第11条では、地代が不相当になった場合として、次のケースを例示しています。
これらはあくまでも例示に過ぎず、地代が不相当となったかどうかは総合的な観点から判断されます。たとえば、前回の地代の改定から相当期間が経過していれば、そのことが考慮されて地代等増減請求が認められる可能性もあります。
地代等増額請求を行うことができる場合は、請求を行った時点で地代が増額されます。
ただし、法的に地代等増額請求が認められるかどうかの結論は、訴訟の判決を待たなければ確定しません。
そのため貸主と借主の間に協議が整わないときは、増額を正当とする裁判が確定するまでは、借主は相当と認める額の地代を支払えば足りるとされています。
ただし、増額を正当とする裁判が確定した場合は、請求時に地代が増額されたものと取り扱ったうえで、不足額に年1割の利息を付して支払わなければなりません(借地借家法第11条第2項)。
宗教法人が貸している土地につき、地代の増額を求めたものの借主が応じないときは、次の方法によって解決を図りましょう。
借主に対して直接地代の増額を求めても応じないなら、弁護士を通じて連絡することを検討しましょう。弁護士が法的根拠を示して増額を求めることにより、借主側は交渉に応じる可能性があります。
弁護士に依頼すれば、借主側との交渉を任せることができます。法律のルールや借主側の対応を踏まえつつ、バランスよく建設的に交渉を進めることで、スムーズに地代の増額を得られる可能性が高まります。
借主側との合意が得られた場合は、その内容をまとめた合意書面についても、弁護士に任せれば適切な形式・内容で作成できるので安心です。
借主側との交渉がまとまらないときは、民事調停の申立てを検討しましょう。
民事調停は、簡易裁判所で行われる紛争解決手続きです。中立の調停委員が貸主・借主の双方から主張を聞き取り、解決に向けたやり取りを仲介します。調停委員は、法的な相場や物件の使用状況などの実情を踏まえつつ、双方にとって納得できる解決の実現をサポートします。
民事調停では、基本的に調停委員との間で話をするため、借主側と直接話をする必要がありません。借主との直接交渉では主張が激しくぶつかり合っていても、調停委員を間に入れることによって対立が緩和され、解決に至るケースもあります。
民事調停を有利に進めるためには、調停委員に貸主側の主張の合理性を理解してもらうことが大切です。
借地借家法によって地代等増額請求が認められているところ、その要件を満たしていること(=地代が諸事情の変化によって不相当となったこと)を示す具体的な事情を説明すれば、調停委員の理解を得られる可能性があります。調停委員にきちんと伝わる主張を組み立てるため、弁護士と協力しながら準備しましょう。
最終的に調停を成立させるためには、当事者双方が一定程度歩み寄る必要があります。求めている増額のすべては認められないとしても、どこまでなら譲歩できるかを事前に検討しておくとよいでしょう。
和解交渉や調停によって解決できないときは、裁判所に訴訟を提起して強制的な解決を図りましょう。
地代等増額請求訴訟では、地代の増額を求める貸主側が、地代が不相当となるに至った事情を立証する必要があります。たとえば、周辺の地価や賃料相場が上昇しているなどの事情を、証拠に基づいて示さなければなりません。
訴訟の中では、裁判所から和解を提案されることもあります。和解案には裁判所の心証が反映されていることが多いので、提案を受けたら真摯に検討することをお勧めします。
訴訟の判決が確定すると、その内容は当事者双方を拘束します。不本意な判決が確定してしまい、地代を引き上げることができなくなる事態を避けるためにも、弁護士と協力しながら十分な準備を整えたうえで訴訟に臨みましょう。
宗教法人はその公益性に鑑み、法人税等が原則として非課税とされていますが、収益事業については宗教法人が行う場合も課税対象となります(法人税法第4条第1項など)。
宗教法人が行う不動産貸付業は、原則として収益事業に当たりますが、例外的に次の要件のいずれかを満たす場合は収益事業に当たりません(法人税法施行令第5条第1項第5号、法人税法施行規則第4条、法人税基本通達15-1-20・15-1-21)。
宗教法人が貸している土地の地代を増額する際には、上記③(c)の要件との関係に注意が必要です。
増額前の地代の額が固定資産税と都市計画税の合計額の3倍以下でも、増額によって3倍を超える場合は、新たに法人税等の課税対象となることがあります。
課税上の取り扱いについて不明点や疑問があるときは、税理士にご相談ください。
宗教法人が長年にわたって他人に貸している土地の地代は、近年の不動産相場の高騰などを踏まえると、不相当に安く据え置かれている可能性があります。
地代が安すぎる場合は、借地借家法に基づく地代等増額請求を検討しましょう。地価や賃料相場の高騰といった事情を立証すれば、借主の同意がなくとも地代を増額できる可能性があります。
地代の増額を求める際には、まず借主との交渉を試みましょう。交渉がまとまらなければ、裁判所の調停や訴訟を利用します。交渉・調停・訴訟などの手続きは、弁護士に任せるのが安心です。
ベリーベスト法律事務所は、宗教法人の運営に関するご相談を随時受け付けております。地代等増額請求についても、契約締結当時や直近の地代改定時からの事情の変化を踏まえた説得的な主張を行い、適正な水準に地代を引き上げられるようサポートいたします。
貸付地の地代を増額したいと考えている宗教法人運営者の方は、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。
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