契約書や利用規約を作成する際、「できるだけ責任を負わないようにしたい」と考えるのは自然なことです。そのため、多くの企業が免責条項を設けています。
しかし、免責条項は、どのような内容でも有効になるわけではありません。法律に反する内容や不適切な書き方をしてしまうと、条項そのものが無効と判断され、かえって企業側のリスクが高まることもあります。また、取引がBtoCとBtoBのどちらであるかによっても免責条項の有効性の判断が変わってきますので、取引ごとに内容を考えていかなければなりません。
本コラムは、免責条項の基本的な内容から、無効となるケース、実務で使える条文例や注意点などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
免責条項は契約書でよく見かけるものですが、正しく理解していないまま使われているケースも少なくありません。まずは基本的な考え方と種類を整理しておきましょう。
免責条項とは、契約当事者の一方が負う責任を軽減したり、一定の場合に責任を負わないと定める条項のことです。
たとえば、「本サービスで生じた損害につき一切責任を負いません」といった内容が典型例です。
企業活動においては、すべてのリスクを完全にコントロールすることはできません。そこで、あらかじめ責任の範囲を決めておくことで、予測できない損害の拡大を防ぐ役割を果たします。
免責条項が重要とされる理由は、企業が過大な責任を負うリスクを回避するためです。
たとえば、システム障害や外部要因によるトラブルなど、企業の努力だけでは防げない事象もあります。そのたびに無制限に責任を負ってしまうと、事業の継続自体が難しくなる可能性があります。
また、取引条件を明確にすることで、後から「どこまで責任を負うのか」で争いになるのを防ぐ効果もあります。
免責条項にはいくつかの種類があります。以下では、代表的なものを紹介します。
免責条項は便利な反面、内容によっては無効と判断されることがあります。ここでは、取引形態ごとにどのような点に注意すべきかを説明します。
消費者との契約では、事業者よりも弱い立場にある消費者を保護するため、消費者契約法による制限が免責条項に適用されます。
① 消費者契約法による免責条項の無効
消費者契約法8条は、事業者の免責を制限する規定を定めています。たとえば、事業者の賠償責任を全面的に免除する条項を無効と定めています。
そのため、消費者を相手とする利用規約や契約書を作成する場合、以下の条項は無効となる可能性があります。
また、賠償責任を一部制限する条項であっても、故意または重過失がある場合にまで責任を制限する内容だと、その条項も無効となります。
そのため、BtoCでは、責任を制限するという形で免責条項を設計することが基本となります。
② サルベージ条項規制とは
サルベージ条項とは、本来は全体が無効になる条項のうち、一定の留保により効力を維持しようとする趣旨で設けられる条項のことをいいます。
たとえば、「法律上許される限り、一切の賠償責任を負わない」といった内容の条項です。
しかし、サルベージ条項は、消費者からみればどの範囲で責任追及ができるのかが不明確であるため、誤解を招くおそれがあります。そこで、令和5年6月施行の改正消費者契約法により、このような責任範囲が不明確な条項は、無効とされることになりました。
免責条項がサルベージ条項にあたると判断されてしまえば、本来免責されるはずの軽過失による損害賠償の免責効果も得られなくなるため、曖昧な書き方は避けなければなりません。
事業者同士の契約では、当事者が対等な立場で交渉することが前提とされるため、免責条項は比較的広く認められる傾向があります。ただし、どのような内容でも有効になるわけではなく、一定の限界がある点には注意が必要です。
① 事業者間取引では基本的には有効
BtoB契約では、原則として当事者間の合意が尊重されます。そのため、責任を制限する条項や軽過失の場合に免除する条項は、有効と判断されます。
実務でも、責任額を契約金額の範囲に限定する条項や間接損害や逸失利益を除外する条項
などは広く用いられています。
もっとも、一切責任を負わないとする完全免責規定については、BtoBであっても無効と判断される可能性がある点には注意が必要です。
② 無効になるのは公序良俗違反など例外的な場合のみ
免責条項の内容があまりにも一方的な場合には、公序良俗違反(民法90条)などを理由に無効と判断されることがあります。
たとえば、次のような条項です。
また、当事者間の力関係によって不利な条件が押し付けられた場合には、独占禁止法や下請法の観点から、その効力が否定されることもあります。
このように、BtoBであっても免責条項の有効性には一定の限界があるため、内容のバランスには注意が必要です。
③ 故意または重過失がある場合には免責規定は適用されない
このように、責任を限定する条項が設けられていたとしても、当事者に重大な過失がある場合には、その条項による保護は及ばないと判断される可能性があります。
「条文に書いてあるから安心」と考えるのではなく、どのような場合に条項が適用されないのかまで見据えて設計することが重要です。
実務では、免責条項の書き方ひとつで有効性が大きく左右されます。ここでは具体的な条文例と有効性判断のポイントを説明します。
免責条項は、責任を完全に否定するのではなく、限定する形で設けるのが一般的です。代表的な例を見てみましょう。
これらを組み合わせることで、実務に適した免責条項を設計することができます。
免責条項は、契約書に記載しておけば安心というものではありません。内容が適切でなければ、いざトラブルが発生した際に十分な効果を発揮しないおそれがあります。
有効な免責条項を作成するには専門的な知識が不可欠です。免責条項が原因でトラブルが起きてしまわないようにするためにも、弁護士に相談することをおすすめします。
免責条項は、消費者契約法や民法などの規制を受けるため、専門的な知識がない状態で作成しても法的には無効と判断されることがあります。
弁護士によるリーガルチェックを受けることで、こうした問題点を事前に洗い出し、適法な内容に修正することが可能です。免責条項は、不測の損害から企業を守る重要な条項ですので、不備のない内容にしておくようにしましょう。
免責条項は、ひな形をそのまま使えばよいというものではありません。
たとえば、ITサービス、物販、業務委託など、ビジネスの内容によって想定されるリスクは大きく異なります。そのため、自社のサービス実態に合わせて条項を設計することが重要です。
弁護士に相談すれば、各企業のサービス実態に応じた独自の免責条項を作成することができます。ひな形では実現が難しいような内容も弁護士であればオーダーメイドで対応可能です。
契約書は一度作成して終わりではなく、事業の変化や法改正に応じて見直しが必要になります。
顧問弁護士を活用すれば、契約書のチェックだけでなく、日常的な法務相談やトラブル対応についても継続的にサポートを受けることが可能です。法的リスクを最小限に抑えるためにも、顧問弁護士の利用がおすすめです。
免責条項は、企業のリスクを適切にコントロールするうえで重要な役割を果たしますが、その内容や書き方によっては無効となるおそれがあります。
また、形式的に条文を置くだけでなく、自社の事業内容や想定されるリスクに応じて、実効性のある内容とすることが重要です。
ベリーベスト法律事務所では、契約書の作成やチェックに関するご相談を随時受け付けております。月額3980円の顧問サービスもご用意しておりますので、免責条項の見直しや新規作成を検討されている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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