よくある質問

配置転換・出向・転籍について、社員に反発された場合、命令に応じない社員に懲戒処分を下してもよいでしょうか。

Q

経理部で働いている社員について、営業部へと異動命令を下したところ、「私のキャリアを考慮してくれないような異動命令に応じる気は無い。」と社員に反発されています。 この社員は、経理の職務経験が豊富で、かつ、経理に関する資格も多く有するということで、中途採用した方なのですが、経理以外の仕事も行うことになるかもしれないということは当初から口頭で説明していました。 また、雇用契約書においても、業務内容を経理に限定することはしていません。 異動命令は正当なものであるとして、命令に応じない社員に懲戒処分を下してもよいでしょうか。

A

説明を前提とすれば、配転命令は有効と評価される可能性が高いと考えられますが、場合によっては無効と判断される可能性があります。懲戒処分を行うにあたっては慎重な判断が必要です。

【詳しい解説】
まず配置転換について、就業規則等に「業務の都合により出張、配置転換、転勤を命ずることができる」旨の包括的な根拠規定が置かれていることが多いですが、このような規定がない場合でも、労働契約の締結の経緯や内容、人事異動の実情などから使用者の配転命令権は認められます。

ただし、個別の労働者との間で、就業場所や業務内容について限定する合意をしている場合には、原則として当該労働者の同意がない限り、合意の範囲を超える配転を命ずることはできません。

また、明示の合意がない場合であっても、職種や職務内容の専門性、採用の経緯、過去の配転実績、勤務形態、給与形態、業務系統、勤務実績等の事情を考慮して職種や就業場所の限定の有無が判断されます。

本件の場合は、雇用契約書において業務を限定しておらず、採用時にも業務内容が経理以外になることがあり得ることを説明していますので、業務内容の限定の合意はなかったと認められる可能性が高いと考えられます。

一方で、経理の職務経験が豊富で、かつ、経理に関する資格を多数有するということを理由として採用しているという経緯がありますので、仮に経理に関する特殊な資格を有することが採用条件となっていた場合には、業務内容限定の合意があったと評価される可能性があります。
業務内容を限定せず、他の業務を担当する可能性があることについては、口頭で説明するにとどめずに、書面で確認しておくと安心でしょう。

仮に業務内容限定の合意がなかったと評価された場合であっても、配転命令が「業務上の必要性が存しない場合または業務上の必要性が存する場合であっても、」「他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき」には、権利の濫用と判断され、配転命令が無効となります(東亜ペイント事件:最二小判昭61.7.14)。

純粋に業務上の必要のための配置転換であれば問題ありませんが、当該労働者が労働組合員であることを理由とした場合や嫌がらせを目的とする場合など不当な動機や目的がある場合には配置転換は無効となります。

さらに、配置転換について有効であると判断されても、懲戒処分としては無効とされる可能性があります。
懲戒処分として有効かどうかは、

①懲戒権の根拠となる就業規則等の存在、懲戒事由及び処分の種類の明定、義務違反の成否の判断
をしたうえで
②懲戒権行使に関する権利濫用の成否の判断をする(労働契約法15条参照)
という2段階で判断されます。

懲戒処分を行うにあたっては、懲戒権や行おうとする処分を就業規則等で定めているか、懲戒処分の種類選択として適切かなど慎重な判断が求められます(懲戒解雇のQ参照)。

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