よくある質問

就業規則の賃金規程を改定し、賃金の引下げ(減額)を行うことは可能でしょうか。

Q

ここ数年間経営の悪化が著しく、このままでは全従業員に対して賃金を支払っていけないという状態にあります。 そこで、就業規則の賃金規程を改定し、賃金の引下げを行うことによって対処したいと考えているのですが、このようなことは可能でしょうか。

A

就業規則の変更について労働者の合意がある場合には可能です。
また、合意がない場合でも、変更後の就業規則が労働者に周知されており、かつ、変更後の就業規則が合理的なものであれば、就業規則の変更によって労働契約の内容の不利益変更は可能です。

【詳しい解説】
労働契約の内容の変更は、労働者と使用者の合意によってすることができ(労働契約法8条)、労働者の合意がないのに、就業規則の変更によって、労働契約の内容を労働者の不利に変更することはできないのが原則です(同法9条本文)。

合意がある場合には、後述する合理性等の要件が充足されるかにかかわらず、合意した労働者との関係では変更は有効となり、変更後の内容が労働契約の内容となります(最二小判平成28年2月19日民集70巻2号123頁)。
なお、労働者の合意については慎重に判断がなされます。

就業規則を不利益に変更することについて合意がない場合でも、
①変更後の就業規則が労働者に周知
されており、かつ、
②変更後の就業規則が合理的なもの
であれば、就業規則の変更によって、労働契約の内容の不利益変更は可能です(同法9条ただし書)。

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①変更後の就業規則が労働者に周知
「周知」とは、労働基準法106条及び労働基準法施行規則52条の2に列挙された方法に限られず、労働者が知ろうと思えば知りうる状態にしておくこと(実質的周知)で足ります。

②変更後の就業規則が合理的なもの
「合理性」は、
ⅰ労働者の受ける不利益の程度
ⅱ労働条件の変更の必要性
ⅲ変更後の就業規則の内容の相当性
ⅳ労働組合等との交渉の状況
ⅴその他の就業規則の変更に係る事情
により判断されます(労働契約法10条)。

これまでの判例、裁判例から、裁判所は、ⅰ労働者の不利益の程度と、ⅱ変更の必要性・ⅲ変更後の内容の相当性の比較衡量を基礎に、ⅳ労働組合との交渉状況やⅴ代償措置・経過措置を加味して合理性を判断しています。
賃金を減額する変更を行う場合には、それに応じた高度の必要性・相当性が必要となります。
賃金の減額幅は、経営悪化の程度との関係で必要性があり、相当性が認められる範囲としなければ、合理性は否定されます。
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なお、個別の労働契約において、労働者及び使用者が当該労働条件は就業規則の変更によっては変更できない旨合意していた場合には、その部分については、その合意が優先します(同法10条ただし書)。

就業規則の変更が合理的なものであり、有効となるか否かについては、個別具体的な事情を考慮し、過去の判例、裁判例を参考に検討する必要があります。
より確実な見通しを立てるためには、弁護士等の専門家にご相談されることをお勧めいたします。

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