よくある質問
業務成績が著しく悪く、また毎日のように遅刻をしてくる社員がいます。 当社はこの社員に自主退職してもらいたいと思っているのですが、どのような点に注意すればよいでしょうか?
自主退職をするよう説得する行為を退職勧奨と言います。
退職勧奨が執拗に繰り返され、労働者の自由な意思決定を妨げるような場合、当該退職勧奨は違法であり、会社は不法行為に基づく損害賠償責任を負う可能性があります。
従業員が退職勧奨に応じない姿勢を明確に示した場合は、それ以降の退職勧奨は違法と判断される可能性が高くなりますので、その場合には退職勧奨は中止しましょう。
【詳しい解説】
自主退職をするよう説得する行為を退職勧奨と言います。
退職勧奨が、労働者の自由意思を侵害するような手段や態様で行われた場合、労働者の人格権を侵害する不法行為となり、退職勧奨を行った使用者は損害賠償責任を負います。
また、退職を強要し、その結果労働者が退職届を提出した場合には、労働者の退職の意思表示が強迫によるものとして、退職届の取消し(民法96条)が認められ、合意退職がなかったことになります。
したがって、退職勧奨をする際には、違法な退職勧奨とならないように
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①回数や1回あたりの時間・期間・頻度
②対応人数
③退職勧奨時の言動(対象者の名誉感情を害することのないように配慮する)
④対象者となった理由を説明すること
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等に注意して行う必要があります。
従業員が隠れて録音を取っている場合がありますので、言動には十分注意しましょう。
そして、対象者が退職勧奨に応じない姿勢を明確に示した場合には、それ以降の退職勧奨は違法と評価される可能性が高くなります。
この場合は、退職勧奨は中止し、それ以降は、解雇ができるかどうかの検討を行いましょう。
なお、退職勧奨に応じないことは解雇理由にはなりませんので、それ以外に客観的に合理的な解雇事由があり、当該解雇事由をもって解雇をすることが社会通念上相当でなければ解雇は無効となります。
本件では、業務成績が著しく悪く、毎日のように遅刻をするとのことですので、退職勧奨と並行して、業務成績を上げるための研修を行う、遅刻について注意を行う(これは書面にしておきましょう)など改善のための試みを行い、解雇に備えましょう。
仮に従業員が自由な意思に基づいて退職勧奨に応じた場合には、合意解約が成立します。
この場合は解雇予告手当の支払い義務はありません。その後に強迫であったとして取消しを主張されたり、条件でもめたりすることのないよう、合意退職について書面を作成するとよいでしょう。
解雇による紛争を避けるため、従業員の将来のため、といった理由で解雇を避けて退職勧奨を行う会社は多くあります。
しかしながら、退職勧奨を選択したことにより、かえって紛争が長期化することもあります。精神的・経済的負担を軽減するためにも、退職勧奨の進め方や合意書の作成方法などについて、弁護士に相談することをおすすめいたします。
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