よくある質問

定年退職後の再雇用について、再雇用を拒否することはできるのでしょうか。

Q

ある社員が定年退職を迎えましたが、就業規則に定年退職後の再雇用についての定めがあると言って、再雇用を求めてきました。 当社では、定年を60歳に定めており、就業規則には、「業務上の必要に応じて、使用者が特に必要と判断した者を再雇用することがある。」という規定があります。 しかし、当社としては、この社員の勤務態度があまり良いものではなかったことから、再雇用を避けたいと考えているのですが、問題はあるでしょうか。

A

当該労働者から不法行為責任を追及される可能性があります。
また、就業規則が平成24年の高年法改正に対応していないようです。
厚生労働大臣による助言、指導、勧告、企業名の公表等を受ける可能性がありますので、早期に就業規則の変更等の対応しましょう。

【詳しい解説】
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下では、「高年法」といいます)では、65歳未満の定年の定めをしている事業者は、雇用する労働者の65歳までの安定した雇用を確保するため、

①定年の引上げ
②継続雇用制度
③定年の定めの廃止

のいずれかの措置を講じなければならないと規定しています(9条)。

②継続雇用制度は、希望者全員を継続雇用するものでなければなりませんが、平成25年3月31日までに労使協定(協定をするために努力したにもかかわらず協議が整わない場合は就業規則等)において、再雇用基準を設けていた場合は、令和4年3月31日までは、同協定の選別対象の63歳までの希望者を再雇用すればよく、その年齢を段階的に引き上げ、65歳までの雇用確保は令和7年4月1日以降となる経過措置が設けられています。

ただし、「使用者が必要と判断した者に限る」、「上司の推薦がある者に限る」など事業主が恣意的に運用できる基準を定めるものは、基準が定められていないに等しく、高年法の趣旨に反し、継続雇用規程全体が無効となると考えられています。継続雇用規程が無効とされると、継続雇用規程が設けられていないと評価されることになります。

事業主が上記の措置を講じない場合、厚生労働大臣は、必要に応じて、助言、指導、勧告、企業名の公表を行うほか(高年法10条)、各種法令に基づき、ハローワークでの求人不受理、紹介保留、助成金の不支給などの措置を講じます。

一方で、措置を講じることは公法上の義務にとどまり、個々の労働者に対する私法上の義務を定めたものではないと考えられていますので、労働者は高年法9条を根拠に雇用継続を請求したり、事業主の債務不履行責任を追及したりすることはできません。
事業主に故意・過失、損害の発生、因果関係が認められる場合に不法行為責任を負う可能性はあります。

■継続雇用しない場合の規定
なお、継続雇用制度がある場合について、高年法9条3項を受けて「高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針」が定められており、継続雇用しないことができる場合を規定しています。

すなわち、「心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと等就業規則に定める解雇事由または退職事由(年齢に係るものを除く。……)に該当する場合には、継続雇用しないことができる」としています。
「ただし、継続雇用しないことについては、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められると考えられることに留意する」と定められており、労働契約法16条の解雇事由と同様の事情がない限り、使用者は継続雇用を拒否できません。

■不法行為責任が追及される可能性も
継続雇用しないことが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、使用者の定めた継続雇用制度の労働条件で再雇用されたと認めた裁判例もあります(最判平成24年11月29日労判1064号13頁)。
本件の就業規則の規定は、継続雇用制度を定めるものであるとしても、基準として不十分であり、高年法9条の趣旨に反するものですから、無効であると解されます。
労働者が高年法9条に基づいて継続雇用を請求することはできませんので、当該労働者との雇用契約を強制されることはありませんが、不法行為責任が追及される可能性があります。

また、就業規則の規定が無効となることから、継続雇用制度を設けていないと評価されますので、厚生労働大臣による助言、指導、勧告、企業名の公表等の措置を受ける可能性があります(高年法10条)。

■どの措置を講ずるかは、弁護士に相談を
今後の紛争を防ぎ、行政上の制裁を受けないために、早期に高年法9条の要請に従い、定年の引き上げ、雇用継続制度の策定、定年の撤廃のいずれかの措置を講ずる必要があります。
どれを選択し、どのような内容とするのかについて、弁護士等の専門家にご相談されるのをおすすめします。

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