よくある質問
当社の従業員が、就業時間中に、当社が支給しているパソコンを使用して、組合ニュースを作成して、他の従業員に送信していたことが判明しました。 当社としては、そうした行為が当社の施設管理権を侵害し、また従業員の職務専念義務に違反しているとして、この社員を処分することを検討しています。 当該社員を処分してもいいでしょうか。
当該社員を処分することは、不当労働行為となる場合もあり得ますので、注意が必要です。
組合ニュースの送信は、組合活動の一つであるといえます。組合活動は、正当に行われたものであれば法的に保護され、「労働組合の正当な行為をしたことの故をもって、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること」は不当労働行為として禁止されます(労働組合法7条1号)。
【詳しい解説】
組合活動の態様については、大きく2つの限定が加えられます。
第1に、労働契約上の義務に反する活動には正当性が認められません。
第2に、企業施設内での組合活動は、使用者の施設管理権による規律に服します。
■労働契約上の義務に反する活動か
まず、第1の点についてです。労働者は、労働契約上の義務として職務専念義務を負っています。
就業時間中の組合ニュースのメール送信は、職務専念義務に違反していると考えられます(ただし、就業規則や労働協約上の許容規定がある場合、慣行上許されている場合、使用者の許諾がなされた場合には、そのようにはいえないでしょう。)。
もっとも、勤務時間中であっても職務専念義務と支障なく両立し使用者の業務を具体的に阻害することのない行動は、職務専念義務に違反しないとの立場もあります。
この立場からすれば、組合メールの送信が職務専念義務に違反するかについて、
①業務の性質・内容
②労働者の職務の性質・内容
③行動の性質・態様等
を具体的に勘案して検討すべきことになります。
したがって、本件でも、上記のようなポイントを検討しておくべきでしょう。
なお、労働者が社会生活を営む上で必要な範囲内で行う私用メールについては、使用者が黙示の許諾を与えているとして、職務専念義務の違反にはなりにくいと考えられています。
■使用者の施設管理権との関係
つぎに、第2の点(使用者の施設管理権との関係)についてです。
判例は、会社施設の利用には使用者の許諾が必要であり、許諾を得ないで施設を利用し組合活動を行うことは、その利用を許さないことが施設管理権の濫用となるような特段の事情がない限り、正当性がないと考えています。
この「特段の事情」の有無は、
①施設利用の必要性
②施設管理上の実質的支障の有無・程度
③使用者がとった措置の相当性
④従来の経緯等
から検討されます。
本件では、貴社が組合メールの送信について許諾を与えていなくても、「特段の事情」があるとされて、組合活動としての正当性が認められることがあり得ますから、注意が必要です。
以上のような不利益を防ぐためにも、会社は、ネットワークシステムの構築とその使用方法について、厳格なルールを事前に定めることが必要になってきます。
組合行為を不当に侵害すると不当労働行為になる可能性もありますので、弁護士に相談しながら慎重な対応をしていただく必要があります。
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